2024.06.27

クルマの性能が読み解ける!?カタログの「主要諸元」を徹底解説

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雑学

かつて「カタログスペック」などと呼ばれていた「主要諸元」。現在では、カタログとは別紙のデータインフォメーションやWeb上に掲載されることが増えました。諸元表はモデルの特徴や仕様など、さまざまな情報が詰まっている重要なもの。今までなんとなくスルーしていたという方も、この記事をご覧になれば主要諸元が読めるようになりますよ。

 

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先日、立て続けに「ヴェルデシルバー」の新型Eクラスに遭遇した、ライターの渡瀬です。ちょっとグリーンがかったメタリックカラーですが、初採用の新色ですので人気が高いのかもしれませんね。ちなみに新型Eクラスにはほかにも9色のボディカラーが設定されています。

▲ボディカラー「ヴェルデシルバー」の新しいメルセデス・ベンツ Eクラス。マイルドハイブリッドやプラグインハイブリッドをラインナップ。写真の仕様・装備は、日本仕様と異なる場合があります。

さて、Eクラスはもちろんのこと新車の購入前にはまずカタログをチェックされるという方は多いのではないでしょうか。かつてはボディカラーをはじめとして、モデルの特徴や仕様などさまざまな情報が詰まっていましたが、最近では詳細情報がWebで紹介されていることが増えました。

 

近年のモデルはグレードによって仕様が多様化している上、Eクラスのようにプラグインハイブリッドとマイルドハイブリッドなど複数の駆動方法を選択できる車種も増えました。デジタル化が進んでいる背景には、紙のカタログでは記載できる詳細内容に限界があることも理由の1つといえます。

 

一方で各メーカーが国へ申請するためにクルマの構造や性能、装備などに関する基本的な情報を記載した「諸元表」は、変わらず存在しています。かつては「カタログスペック」とも呼ばれていたようにカタログの中に記載されていましたが、最近では別紙で扱われることが多くなっており、メルセデス・ベンツではデータインフォメーション中に「Technical Data」および「主要諸元」というかたちで記載されています。

▲Eクラス セダンのマイルドハイブリッドモデルの諸元表。プラグインハイブリッドモデルは、EV走行時の燃費などが別途記載されます。

でも、クルマに詳しい方でもない限り何のことを記載しているのか、どう読めばいいのかわかりませんよね。そこで、この記事ではEクラスの主要諸元を参考に主な部分を解説。きっと、担当セールススタッフとの会話もスムーズに進むことでしょう。

 

トランスミッション
「A/T」は「オートマチックトランスミッション」の略。かつては「M/T」(マニュアル車)や「CVT」(無段変速車)なども存在していましたが、現在は「A/T」のみとなっています。なお、EQ(電気自動車)はトランスミッションが存在しません。

 

ボア×ストローク
エンジン内でピストンが往復運動をするシリンダーの内径が「ボア」、ピストンが往復する距離が「ストローク」。ボアよりストロークの数値が大きいエンジンをロングストローク形と呼び、実用的なエンジンに多く採用されています。逆に小さいエンジン(ショートストローク型)は高回転型のスポーティなエンジンとなります。

 

最高出力
エンジンによって発揮する最大パワーのこと。単位のkWは「キロワット」で、かつて主流の記載単位だった「PS」(Pferde-Strke。ドイツ語で「馬の力」。いわゆる仏馬力)が併記されています。1958年以前には「hp」(Horsepower。いわゆる英馬力)という単位も使用されていました。rpmはそのパワーを発揮する1分間の回転数を指します。

 

最大トルク
エンジンが発生する最大の回転力のこと。単位はN・m(Newton metre)。1992年まではkg・m(キログラムメートル)が使用されていました。

 

ECE
自動車の構造・装置の安全・環境等の基準統一を目的に、欧州経済委員会が中心となって策定した技術基準のこと。

 

車両重量
車体本体、ガソリン(満タン)、エンジンオイル、冷却水、バッテリーなどを含めた重量。乗員や積載物の重量は含まれていません。

 

最小回転半径
ハンドルをいっぱいまで切った状態で旋回し、もっとも外側のタイヤの中心が描く円の半径のこと。一般的に小回りがどれだけ効くかを判断する基準となります。

 

燃料消費率(燃費)
ガソリン(または軽油)1Lで進める距離を示したもの。2011年よりJC08モードという日本独自の測定方法で計測されていましたが、2017年の夏より世界統一試験サイクルであるWLTCモードが使用され、より実燃費に近い数値となりました。モードごとの燃費が記載されているのも特徴です

 

荷室容量
ラゲージスペースの広さを示したもの。VDA方式とは、VDA(ドイツ自動車工業会)が定めた規格で 200×100×50mm(1リットル)の立方体が何個入るかで測定しています。

 

こうしてEクラスの諸元表を見ていくと、いくつか面白い点が見つかります。E200 アバンギャルドはガソリン車、E220d アバンギャルドはディーゼル車ですが、最高出力はE200 アバンギャルドが高くなっています。一方で最大トルクはE220d アバンギャルドのほうが大きくなっています。ガソリン車とディーゼル車の特徴がよく表れていますね。燃費もやはり、ディーゼル車のE220d アバンギャルドのほうが良好です。

▲E200 アバンギャルド(メルセデス・ベンツ日本HPより)

▲E220d アバンギャルド(メルセデス・ベンツ日本HPより)

興味深いのは、E300 エクスクルーシブの最小回転半径(5.0m)が、他の2モデルの最小回転半径(5.4m)よりも40cmも小さいこと。これはE300 エクスクルーシブに低速域でリアホイールを最大4.5度傾ける「リア・アクスルステアリング」が標準装備されているため。これもData Informationを読み進めていくと項目にチェックがあることがわかります。

▲E300 エクスクルーシブ(メルセデス・ベンツ日本HPより)

同一モデルだけでなく、さまざまな車種のものを見比べることで、新たな発見が見つかる諸元表。クルマを購入する前に、さらには購入後もご自身の愛車のことをもっと知るために、ぜひ諸元表の細かい部分を確認してみることをおすすめします。

 

(渡瀬基樹)

渡瀬基樹(わたせ・もとき)

ゴルフ雑誌、自動車雑誌などを経て、現在はフリーの編集者・ライター。『Octane日本版』など自動車関係の編集のほか、鉄道・ライフスタイル系の記事制作・編集に携わるほか、クラシックカーやスーパーカーのツーリング・ツアーイベントのルート設計やツアーディレクターも務める。著作に『迷宮駅を探索する』(星海社新書)。

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