通勤や通学などの近距離移動でクルマを使用している場合、経済的で利便性が高いのがEV(BEV)です。一方で長距離の移動が中心という人にとっては、満充電までの時間が長いEVより、すぐに給油できるハイブリッド車やエンジン車が便利でしょう。もちろん、短距離利用が主体だけど時には長距離も運転するという人も少なくないはず。そんな時に検討したいプラグインハイブリッド(PHEV)。今回は、両者のいいとこ取りであるPHEVという第3の選択肢をご紹介します。
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意味合いがやや異なる「電動車両」と「電気自動車」
人生の4分の3ほどを、幹線道路沿いで暮らしているライターの渡瀬です。
電気自動車(EV)を筆頭に、電動化の波が押し寄せている自動車業界ですが、ガソリンやディーゼルといった内燃機関のクルマにまだまだ愛着があるという人は多いでしょう。独特の加速フィール、エンジン音や排ガスの臭いまでノスタルジックな感性を刺激するのは、やはり内燃機関車です。
一方で国道1号のそばで生まれ育ち、現在も都内の幹線道路沿いで騒音と排ガスに悩まされている身としては、なるべく電動車両が普及して欲しいという気持ちもあります。趣味で乗る車はともかくとして、業務用の車両や日常のアシとして使用する車は、CO2の削減という面でも電動車両のほうが効率的です。
ところで、電動車両といってもいくつかの種類があります。まずはその種類について見てみましょう。
このなかでメルセデス・ベンツに採用されているのは、主要な方式であるBEV、PHEV、HEVです。この3つの違いについて、詳しく見ていきましょう。
もっともシンプルな構造の電気自動車(BEV)
CO2削減の切り札として、注目を集めているBEV。メルセデス・ベンツでは「EQ」という名称がつけられています。2024年9月現在、EQS、EQEの2つのセダンと、EQS SUV、EQE SUV、EQB、EQAの4つのSUVをラインアップしています。
BEVの構造はいたってシンプル。バッテリーに充電された電力でモーターを動かし、走行します。走行中に回生(減速時のエネルギー)で得られた電気はバッテリーへと蓄電します。しかしバッテリーへの充電は外部からの充電がメイン。充電に一定の時間がかかること、また、航続距離を伸ばすためにはバッテリーの容量を大きくしなければならず、必然的にボディサイズや車両重量が大きくなってしまうことが最大の課題です。
ガソリンや軽油が燃料のハイブリッド(HEV)は3種類
エンジンと燃料タンク、モーターとバッテリーの両方を備えているのがHEVです。大きく3つの種類に分けられますが、共通しているのはエネルギー源がガソリンや軽油などの化石燃料であること。また、外部からバッテリーへ直接給電することができないことです。
●パラレル方式
エンジンでの走行を基本として、主に発進時や加速時など負荷がかかるときに、回生で蓄えた電気を使ってモーターがアシストする方式。モーター単独での走行は行いません。メルセデス・ベンツのハイブリッドシステムはパラレル方式を採用しています。
●スプリット方式(シリーズ・パラレル方式)
発進時や低速時はモーターのみ、蓄えた電気量が少ない場合はエンジンのみで走行し、高負荷時や高速走行時にはエンジンとモーターを併用して走行する方式です。
●シリーズ方式
エンジンは駆動系に直結せず、電力を供給するための発電機として機能する方式。バッテリーから供給された電力を使用し、モーターのみで走行します。
BEVとHEVの利点が融合したプラグインハイブリッド(PHEV)
HEVと同様にエンジンとモーターの両方を搭載するPHEV。構造的にはHEV(スプリット方式)のバッテリーに、外部から充電できるようにしたものといえます。
PHEVの特徴は、まず近距離であればBEVとして使用できるということ。HEVよりバッテリーの容量が大きいため、一般的な通勤や通学といった用途であれば夜間の普通充電で十分な電力を蓄えることができます。
お休みの遠出では、HEVとして活躍。バッテリーの容量が少なくなっても、ガソリンや軽油を給油すれば走行できるため安心して出かけることができます。
クルマの使用用途を限定するのは難しい?
こうして近距離向きのBEV、長距離向きのHEVと、電動車が採用する方式によって向き不向きの環境があるのは確かです。たとえば島国である沖縄本島など、南北180kmという限られた範囲で乗ることが一般的な場所は、BEVに向いた土地柄といえます。また、仕事で高速道路を主に走行するという人には、HEVが向いている可能性が高いとも言えます。
しかし東京で暮らしている人は、普段は通勤や通学で使っているけれど、長期休暇の際に遠出するといった使い方も考えられます。オールラウンダーであるPHEVは、近距離でも長距離でもなく「どちらともいえない」に○をつける人にピッタリのクルマだと言えましょう。
2024年9月現在では、Cクラス、Eクラス、Sクラス、GLC、GLCクーペにラインアップしているPHEV。購入を検討しているモデルに設定されているようでしたら、ぜひご一考を。
(渡瀬基樹)
渡瀬基樹(わたせ・もとき)
ゴルフ雑誌、自動車雑誌などを経て、現在はフリーの編集者・ライター。『Octane日本版』など自動車関係の編集のほか、鉄道・ライフスタイル系の記事制作・編集に携わるほか、クラシックカーやスーパーカーのツーリング・ツアーイベントのルート設計やツアーディレクターも務める。著作に『迷宮駅を探索する』(星海社新書)。
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