2024.10.17

高パフォーマンスにエレガントが加わった新型AMG GT 2ドアクーペ

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日本国内で開催される自動車レースの中で、最も人気が高いのがSUPER GT。そのGT300クラスに参戦しているGT3マシンのベース車両がメルセデスAMG GTです。2024年4月にフルモデルチェンジを果たしたAMG GTの進化のポイントとともに、AMGについてもご紹介します。

 

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AMGが手がけたハイパフォーマンスモデル

 

F1は毎レースをリアルタイムで観戦するモータースポーツファンの萩原です。

 

自動車レースの最高峰F1をはじめ、数多くのレースに参戦しているメルセデス・ベンツ。サーキットでつちかった技術がフィードバックされた高性能モデルも数多くラインアップしているのが特徴です。

 

世界で人気のF1に対し、日本国内で最も人気の高いレースシリーズがSUPER GT。このSUPER GTのGT300クラスに、メルセデスAMGから4台のGT3マシンが参戦しています。このレーシングカーのベースとなっているのが、AMG GTクーペ。

 

そんなAMG GTクーペが2024年4月にフルモデルチェンジを行い、新型へと進化しました。そこで同車の歴史を振り返りつつ、どのようなポイントが進化したのか、そもそもAMGとは一体どのような組織なのか、ご紹介したいと思います。

▲初代AMG GTのフロントスタイル

「モータースポーツこそが技術力の優位性を何よりも端的に示す」。この確固たる信念に基づき、1967年にAMG(エーエムジー)が誕生しました。AMGの名前は、発起人でありエンジニアのハンス・ヴォルナー・アウフレヒト(Aufrecht)、そのパートナーのエバハルト・メルヒャー(Melcher)、そしてアウフレヒトの出生地、グローザスパッハ(Grossaspach)の頭文字から取られたものです。

 

AMGは発足当初、メルセデス・ベンツの市販車をベースに独自の改良を施したレーシングマシンを製造し、数々のレースにおいて輝かしい成績をおさめていきました。1988年からはメルセデス・ベンツと本格的なパートナーシップを組み、中核となるモータースポーツ活動を通じてつちかったレーシングカーテクノロジーとメルセデス・ベンツの最先端技術を結集し、メルセデスのハイパフォーマンスモデルの開発と生産を担う存在とまでなりました。

 

そして2015年、初代メルセデスAMG GTクーペ導入を機に、メルセデス・ベンツブランドの傘の下で”究極のハイパフォーマンス“を追求するブランドとして、「メルセデスAMG」が誕生。

 

“究極のハイパフォーマンス”を追求するメルセデスAMGは、“究極のエクスクルーシブ性”を追求するメルセデス・マイバッハとともに、メルセデス・ベンツ両極の“究極”を担っています。つまり、いちチューンドカー工場が、本家に認められてジョインし、今やハイエンドスポーツグレードの代名詞となるまで成長したというわけです。

▲初代AMG GTのリアスタイル

スローガンは“Handcrafted by Racers.”

 

初代メルセデスAMG GT クーペは、AMGのレーシングスピリットと技術を余すことなく備えたスパルタンなスポーツカーとして、2015年に日本市場に導入されました。メルセデスAMG GTクーペは、SLS AMGに続くメルセデスAMG社による完全自社開発スポーツカーとなります。

 

初代メルセデスAMG GT クーペのボディは、軽量でありながら非常に高い強度を実現したアルミスペースフレームを採用。さらにフロントミッドシップエンジンとトランスアクスルレイアウトのトランス密書により、理想的な47:53という前後重量配分を実現しています。

▲コンパクトな4L V8ツインターボエンジン

フロントミッドシップに搭載されるエンジンは、最高出力462ps、最大トルク600Nm(デビュー当初のAMG GT)を発生する専用開発のAMG 4LV8ツインターボエンジン。徹底した軽量化やドライサンプ潤滑システムによる低重心化や、2基のターボチャージャーをV8エンジンのVバンク内側に配置する“ホットインサイドV”レイアウトがもたらすコンパクト化と、吸気経路の最適化などメルセデスAMGのもつレースシーンでつちかったテクノロジーの詰まったエンジンとなっています。

 

組み合わされるトランスミッションは、7速のAMGスピードシフトDCT。エンジンパワーを途切れることなく駆動輪に伝え続けるデュアルクラッチ式トランスミッションを採用。駆動方式はFRの後輪駆動です。

▲サーキット用のタイヤを標準装備するAMG GT R

2017年6月には究極のパフォーマンスを発揮する、公道走行可能なレーシングモデルである「メルセデスAMG GT R」を追加。このメルセデスAMG GT Rは、SUPER GTをはじめとした数々のレースで輝かしい成績を残すAMG GT3の技術を惜しみなく投入した、サーキットを走るために生まれた公道走行可能なレーシングモデルでした。

 

外観は1952年に開催された伝説的なレースであるカレラ・パナメリカーナ・メヒコで優勝を飾った「300SL」レーシングカーを彷彿させるAMG パナメリカーナグリル。そして強力なダウンフォースを生み出すアジャスタブルリアウイングスポイラーをはじめとする数々の専用装備を採用することで、空力効率を強化するとともに、最適なグリップを確保しています。

 

さらに、メルセデスAMG初となる4輪操舵システム「AMGリア・アクスルステアリング」や9段階の調整が可能なAMGトラクションコントロールなどサーキットを速く走るための専用装備を備えています。

▲AMG GTロードスターのフロントスタイル

同年8月には開閉時間わずか11秒、時速50km/hまでなら走行中でも操作できるソフトトップを備えたオープンモデルのGTロードスター/GT Cロードスターを追加。ロードスターの最大の特徴であるアコースティックソフトトップは、開放時にはソフトトップがシート後方で折りたたまれる省スペース設計。また、3層構造のソフトトップはマグネシウム、スチール、アルミを使用することで、より軽量化が図られていました。

 

またGT Cロードスターは20インチホイールを装着し、アルミニウム製サイドウォールによりリア幅をGTより57mm拡大し、エアロダイナミクスを最適化。その後2017年10月にはクローズドボディのメルセデスAMG GT Cも追加されています。

▲AMG GT4ドアクーペのリアスタイル

そして2019年2月には、メルセデスAMG GT4ドアクーペが登場。このモデルは、メルセデスAMGのアイデンティティである究極のハイパフォーマンスを持ちながら、官能的なデザインと広い室内空間および4ドアの利便性を兼ね備えたモデル。パフォーマンスやデザイン性を求めながらも、日常生活での使い勝手にも妥協をすることができないユーザーの要望に応えるモデルでした。

 

2ドアクーペは4WDモデルに

 

なお、2024年4月にフルモデルチェンジを行ったのは、AMG GTクーペの2ドアモデルだけ。AMG GT4ドアクーペは継続販売となっています。

▲新型AMG GTクーぺのフロントスタイル

新型AMG GT2ドアクーペのボディシェルには、メルセデスAMGが開発したまったく新しい車両アーキテクチャを採用。アルミニウム、スチール、マグネシウム、繊維複合材などの組み合わせにより重量を抑えつつ、高い剛性を実現。ボディシェルのねじり剛性は先代比で18%向上。横軸の剛性は50%、縦軸の剛性は40%高くなるなど、基礎から一新されています。

 

また、新型AMG GT2ドアクーペのボディシェルアーキテクチャは2+2の4人乗りシートを採用するための基本レイアウトと多種多様な駆動システムへの対応が可能となりました。そうそう初代AMG GT2ドアクーペは2シーターのみでしたが、新型では2シーター仕様が標準となりますが、オプションで4名乗車が可能な2+2の可倒式リアシートを選べるようになっているのがポイントです。

▲上が初代AMG GTのトランク、下が新型のトランク。深さが大きく異なる

ラゲッジスペースの容量は、初代モデルが350Lでしたが、新型は2シーター仕様だと321Lと数字は減っていますが、深さを確保するなど使い勝手が向上しています。

 

またオプションの可倒式リアシートを装着し、背もたれを倒すと675Lまで拡大。またEASY-PACK自動開閉テールゲートとフットトランクオープナーが採用され、利便性が向上しています。

▲特別な改良が施されパワーアップした4L V8ツインターボエンジン

搭載している4L V型8気筒ツインターボエンジンは、新たなオイルパンや、搭載位置を変更したインタークーラーなど特別な改良が加えられ、最高出力585ps、最大トルク800Nmというパフォーマンスを発揮。

 

組み合わされるトランスミッションは9速のAMGスピードシフトMCTで、駆動方式はメルセデスAMG GT 2ドアクーペとして初めて四輪駆動システムであるAMG 4MATIC+を採用しているのがトピックです。

 

AMG 4MATIC+は、前後トルク配分の連続可変が可能で、走行状況やドライバーの操作に応じて前後トルク配分を50:50〜0:100の間で連続可変させます。これにより、トラクション重視の4WDと純粋なFR(後輪駆動)をシームレスに切り替えることが可能です。なお、ドライブモードでドリフトを選ぶと前後トルク配分が0:100の完全なFR固定状態にすることもできます。

▲新型AMG GTクーペのリアスタイル

新型メルセデスAMG GT2ドアクーペの外観デザインは、新しいレイアウトコンセプトによって「パワーラグジュアリー」を体現しています。クラシカルなロングノーズ、ショートデッキのスタイリングは、より空力性能を向上させる工夫が施されています。

 

インテリアデザインは初代モデルから大きく変更され、アナログとデザインを融合させた「ハイパーアナログ」デザインを採用。AMGハイパフォーマンスカーのDNAを取り入れながら、高品質な素材やクラフトマンシップによってラグジュアリーな仕上がりとなっています。

▲新型AMG GTクーペのインテリア。豪華さが増している

新型メルセデスAMG GT2ドアクーペには、12.3インチのデジタルコクピットディスプレイと11.9インチの縦型メディアディスプレイの2画面を標準装備。それぞれ、AMG専用のコンテンツ表示によって、AMGならではの特別なコクピットを形成しています。

 

また、対話型インフォテイメントシステム「MBUX」は第2世代を搭載。「ハイ!メルセデス」で軌道するボイスコントロールによってインフォテイメント機能をはじめ、エアコン、照明などの操作が行えます。

▲新型AMG GTクーペのシート。リアシートをオプション装着可能

新型メルセデスAMG GT2ドアクーペの進化のポイントをまとめると、まずボディの骨格から一新し、より軽量・高剛性ボディとなったこと。そして、オプションでリアシートが装着可能となり実用性がアップしたこと。

 

パワーアップした4L V8ツインターボエンジンに合わせてトランスミッションは9速化。そして駆動方式はFR(後輪駆動)からAMG 4MATIC+という4WDシステムに変更され、走行安定性が向上していること。

 

そして内外装のデザインが変更され、特にインテリアは「ハイパーアナログ」デザインとなり、大型ディスプレイ主体に変更されたことが挙げられます。

 

実際に、新型メルセデスAMG GT2ドアクーペに試乗しましたが、初代モデルがレーシーな雰囲気が漂っていたのに対して、新型はラグジュアリーな雰囲気を強く感じました。こんな大排気量エンジンを搭載したスポーツカーが作れるのも、排出ガスを出さないBEVのラインアップが充実しているメルセデス・ベンツだからできることです。

▲メルセデス・ベンツ中野の2階はAMG専用のショールームとなっている

宮園輸入車販売株式会社は、メルセデス・ベンツだけでなく、メルセデスAMGやメルセデス・マイバッハも取り扱うメルセデス・ベンツの正規ディーラーです。新型メルセデスAMG GT2ドアクーペが気になる方はぜひ、知識豊富なスタッフのいる宮園輸入車販売株式会社へ足を運んでみてください。

 

(萩原文博)

萩原文博(はぎはら・ふみひろ)
AJAJ会員。大学在学中から中古車情報誌の編集部にアルバイトで参加。卒業後は編集者として企画立案し、ページ制作を行う。2006年からフリーランスエディター/ライターとして独立。2015年からは、新車カタログ本製作を担当し年間200台以上の新車試乗・撮影を行っている。

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