2024.12.26

多くの人に愛されてきたモデル。伝統あるEクラスの歴史をひも解く

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メルセデス・ベンツの中核を担うモデルであるEクラス。セダン以外にステーションワゴン、SUVタイプのオールテレイン、クーペ、時にはカブリオレと、多彩なボディタイプが用意されています。30年以上の長きにわたり多くの人から愛されてきたEクラスにはどんな魅力があるのか。これまでの歴史を振り返りながら考えてみましょう。

 

 

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2024年1月、新型Eクラスがデビュー!

▲E350eにはオプションでイルミネーテッドラジエーターグリルを設定(写真の仕様・装備は、日本仕様と異なる場合があります)。

メルセデス・ベンツのラインナップの中では、Eクラスステーションワゴンが欲しいと思っている高橋です。

 

現行型Eクラス(W214型)は通算6代目で、2024年1月にセダンとステーションワゴンが日本に導入されました。先代のW213型よりホイールベースを20mm拡大し、その分キャビンスペースが広げられています。

 

スタイルはベーシックな3ボックス形状(エンジン・キャビン・トランク)を継承。メルセデス・ベンツのデザイン思想である「Sensual Purity(官能的純粋)」によるシンプルさの中に抑揚を感じさせる面構成と、キャビンの重心を後方に寄せたキャブバックワードにより、上質でスポーティさを感じさせます。キャビンは大人5人がゆったり座れるスペースを確保。リアシート頭上にも十分な広さがあります。

Eクラスの元祖は1946年に登場

▲メルセデス・ベンツミュージアムに展示されるW120型メルセデス・ベンツ 180

「Eクラス」という名称が使われるようになったのは1993年。それまでミディアムクラスと呼ばれていたW124型がマイナーチェンジを機に名称変更されました。このマイナーチェンジでグレード表記も変更されていて、ミディアムクラス時代は「300E」など数字が前にありましたが、1993年のマイナーチェンジ以降は「E320」と、アルファベットが最初に表記されるようになりました。

 

つまり、現在のEクラスと直接的な繋がりが認められるのはW124型。あるいは、その先代モデルとなるW123型まで。

 

そんなW124型ミディアムクラスは1985年にデビューしましたが、現行Eクラス発表時のプレスリリース(2024年1月)によると、その歴史は1946年発表のW136型まで遡ると書かれています。そして1953年には、170(W136型)の後継モデルとして登場した180(W120型)へと続くのです。

 

「ポントン」と呼ばれたW120型は終戦から8年後に登場したモデルですが、すでにキャビンを強固にしつつ、万が一の衝突時には前後が潰れることでキャビンを守る衝撃吸収ボディ構造を取り入れていました。メルセデス・ベンツの安全思想はこの時代のモデルからも感じることができます。

▲W114型は6気筒エンジン搭載のW114と、4気筒エンジン搭載のW115がラインナップされた(写真の仕様・装備は、日本仕様と異なる場合があります)

W120型は1961年に「羽ベン」と呼ばれるW110型、1968年にW114型へと進化します。W114型は人々から(Sクラスに対して)「コンパクトクラス」と呼ばれ、多くのユーザーに愛されました。そう、1982年にメルセデス・ベンツ初のDセグメントモデルである190(W201型)が登場するまで、Eクラスの系譜にあるモデルがメルセデス・ベンツのコンパクトクラスを担っていたのです。そんなW114型にはセダンの他、クーペもラインアップされていました。

▲W123型で新しくラインアップに加わったステーションワゴン(写真の仕様・装備は、日本仕様と異なる場合があります)

W114型は1976年にW123型へとフルモデルチェンジ。W123型にはセダン、クーペ、ホイールベースを伸ばし3列シートを配置したリムジンの他、ユーザーからの要望が多かったステーションワゴンがラインアップされました。実用性の高いステーションワゴンが加わったことは、Eクラスの歴史の中で意味のある出来事だったと思います。

 

実用性とラグジュアリー性が高次元で融合したW124

▲今なお人気が高いW124型(写真の仕様・装備は、日本仕様と異なる場合があります)

W123型は1985年にW124型へとフルモデルチェンジしました。1982年に190クラスが登場したことで、W124はミディアムクラスと呼ばれました。ボディタイプはセダン、ステーションワゴン、クーペ、カブリオレ、6ドアのリムジンがラインナップされました。

 

デザインはベーシックな3ボックス形状を継承しつつ、洗練されたスタイルになりました。キャビンを広く取り、トランクスペースも使いやすい形状にすることで実用性を高めているのが見た目からも伝わってきます。

▲ダイヤルスイッチを含め、スイッチ類が機能的に配置されるW124型のインテリア

インテリアも特徴的で、無骨でありながらもウッドパネルを効果的に使うことで高級感を高めているのがわかります。アクセルペダルやステアリングの操作感はかなり重め。これはドライバーがきちんと操作して正しく安全に走行するというメルセデス・ベンツの哲学によるものと言われています。ステアリングの径が大きいのもこの時代のメルセデス・ベンツの特徴でした。

 

W124型はエンジンバリエーションが豊富な点にも注目。2.3L直4、2.6Lと3Lの直6、3L 直6DOHC、3L 直6ディーゼルターボ、4.2L V8などが用意されました。1991年にはポルシェが開発・製造に携わった5L V8エンジンを搭載の500Eもラインナップに加わっています。

 

楕円形4灯のフロントフェイスに変更

▲顔つきは変わったが、Eクラスらしい使いやすさは継承(写真の仕様・装備は、日本仕様と異なる場合があります)

1995年にはW210型へとフルモデルチェンジ。この世代はフロントライトが楕円形の4灯タイプに変更されました。デザインが大変貌を遂げたことに世間は驚きましたが、ボディ全体を見ると、これまでの系譜が大切にしてきたキャビンの広さやたくさん荷物を積んで出かけることができるトランクスペースの広さがしっかり継承されていることがわかります。

▲ボディサイズを活かしたくさんの荷物が積めるのはEクラスならでは

ドア内蔵式のサイドエアバッグを世界初採用し、ESPも装備されるなど、安全性が高められているのもこの世代のトピックです。そして標準仕様のほか、アバンギャルドが用意されたのもこの世代からになります。W210型のボディタイプはセダンとステーションワゴンの2種類になります。

▲モダンな雰囲気になったW211型(写真の仕様・装備は、日本仕様と異なる場合があります)

2002年にはW211型へとフルモデルチェンジ。W210型から採用した楕円4灯デザインを継承しつつ、流麗さをともなったモダンで高級さを感じさせるデザインに生まれ変わりました。

 

この世代からプラットフォームが刷新され、走りの剛性感が高められています。センソトロニックブレーキコントロールやステーションワゴンのセルフレベリング機構など、メルセデス・ベンツならではの先進装備が数多く投入されたのもトピックです。

▲伸びやかなボディラインが印象的なW211型ステーションワゴン(写真の仕様・装備は、日本仕様と異なる場合があります)

W210型同様に、ボディタイプはセダンとステーションワゴンが用意されました。ラインアップは2.6L V6のE240、3.2L V6のE320、5L V8のE500が用意されました。

 

4種類のボディタイプが用意されたW212

▲前衛的な表情でスポーティさが高められたW212型(写真の仕様・装備は、日本仕様と異なる場合があります)

2009年にフルモデルチェンジしたW212型は4灯型ヘッドライトのデザインがさらに進化し、楕円形から角形に変更。スポーティなイメージを前面に打ち出す形になりました。ボディタイプはセダン、ステーションワゴンに加えてクーペとカブリオレが14年ぶりに復活しました。

▲3ボックススタイルから実用性の高さが伝わってくる(写真の仕様・装備は、日本仕様と異なる場合があります)

前衛的なイメージが強いW212型ですが、セダンの横からのシルエットを見ると歴代Eクラスが大切にしてきた実用性の高さを継承したスタイルであることがわかります。ダイヤルでナビ操作などができるCOMMANDシステムのほか、ネックプロアクティブヘッドレスト、アダプティブハイビームアシスト、アクティブボンネットなどの先進的な安全装備が搭載されているのも特徴です

▲独立した4灯ヘッドライトからコンビネーションライトに変更された後期型(写真の仕様・装備は、日本仕様と異なる場合があります)

2013年のマイナーチェンジではヘッドライトやグリルデザインが大幅に変更され、ハイブリッドもラインナップに加わりました。

 

次世代安全運転支援システムが進化したW213

 

▲先代Eクラスは上からアバンギャルド、AMGラインをまとったアバンギャルドスポーツ、伝統を感じさせるエクスクルーシブと、3種類のフロントフェイスを用意(写真の仕様・装備は、日本仕様と異なる場合があります)

先代Eクラス(W213型)が登場したのは2016年。メルセデス・ベンツの基本思想である「Sensual Purity(官能的純粋)」に基づいたデザインは、上品でエレガント。ボリューム感もあり、プレミアムモデルらしい佇まいです。この世代は、アバンギャルド、アバンギャルドスポーツ、エクスクルーシブでフロントフェイスが変えられていることも注目です。

 

インテリアにはステアリング奥とインパネセンターに2つのワイドディスプレイを配置。このディスプレイは1枚のガラスカバーで覆われ、一体化して見えるようにデザインされています。

 

エンジンは2L直4 Blue DIRECT ターボ、3.5L V6ツインターボBlue DIRECT、新開発された2L直 4 ディーゼルターボを用意。トランスミッションは9速ATの9G-TRONICが搭載されています。

 

ボディタイプはEクラスの伝統を受け継ぎ、セダン、ステーションワゴン、SUVタイプのオールテレイン、クーペ、カブリオレの5種類が用意されました。

 

▲W213型で新たにラインナップに加わったEクラスオールテレイン(写真の仕様・装備は、日本仕様と異なる場合があります)

W213型は次世代安全運転支援システムが大きく進化したことも見逃せません。中でも高速道路走行中にステアリングパイロットが起動しているとき、ドライバーがウインカーを2秒以上点メルさせるとクルマが周囲の安全確認を行い自動で車線変更する『アクティブレーンチェンジアシスト』が初搭載されたことが話題になりました。

 

使い勝手の良さこそがEクラス“らしさ”

写真の仕様・装備は、日本仕様と異なる場合があります

同時に、伝統を守り続けている部分があることに気付きます。中でも私がEクラスらしさと感じるのは、使い勝手の良さです。

 

フラッグシップモデルとしてSクラスが存在し、Eクラスはその名称が使われる以前はコンパクトクラスという立ち位置でした。つまり多くの人から選ばれるモデルとして、どんな人でも運転しやすく、リアシートの居住性もしっかり確保されています。もちろん家族で旅行に出かける際にも困らないよう広いラゲッジスペースが用意され、リアシートの40:20:40分割機能も備わります。

 

また、誰もが運転しやすいモデルであることを象徴するのが、アッパーミドルサルーンとは思えない最小回転半径の小ささ。Eクラスは歴代ステアリングが大きく切れることで知られています。現行型Eクラスセダンの最小回転半径は5.4mで、リア・アクスルステアリングが標準装備になるE300エクスクルーシブとE350 eスポーツ エディションスターのドライバーズパッケージ装着車は、なんと5.0mになります。

 

参考までに他モデルの最小回転半径を調べてみると、国産アッパーミドルセダンの最小回転半径は5.6〜5.8mでした。

 

もちろん多くの人に選ばれるモデルだからこそ、いつの時代も最新の安全性が盛り込まれているのもEクラスの伝統。そして多彩なニーズに応えるために多様なボディタイプとエンジンラインアップが用意されます。最新のEクラスも「やっぱEクラスっていいな」と思えるはずですよ。ぜひ宮園輸入車販売のメルセデス・ベンツ正規ディーラーで試乗してみてください。

 

(高橋満)

高橋満(たかはし・みつる)
求人誌編集部、カーセンサー編集部を経て1999年にエディター/ライターとして独立し、自動車、音楽、アウトドアなどをテーマに執筆。得意としているのは人物インタビュー。最近はゴルフに興味が出てきていて(まだデビュー前ですが)、Eクラスステーションワゴンのようなラゲッジが広くて快適に移動できるクルマに興味津々。

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