2024.06.20

メルセデス・ベンツのインフォテイメントシステム“MBUX”で何ができる?どこまで使える?

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近年、自動車業界はコネクテッド(Connected)、自動運転化(Automated)、シェアリング(Sharing)、電動化(Electrification)の頭文字をとった“CASE”と呼ばれる領域での技術革新が行われています。特にコネクテッドと電動化の進化は目覚ましく、一部改良でも大幅に変更されることもしばしば。ここではメルセデス・ベンツの現行モデルが搭載しているインフォテイメントシステム“MBUX”の機能や使い方などを紹介します。

 

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近年、メルセデス・ベンツのニューモデルで注目を集めがちなのが“コネクテッド機能”と“電動化”ではないでしょうか。メルセデス・ベンツは、「Mercedes me」と呼ばれるコネクテッド機能を展開しています。Mercedes meは、クルマとサーバーをインターネット回線で接続し、様々なサービスや情報提供を受けられる通信サービス。そのコネクテッド機能を使用するためのユーザーインターフェイスが、インフォテイメントシステム「MBUX」(メルセデス・ベンツ ユーザー エクスペリエンス)です。

 

インフォテイメントシステムというのは、従来のオーディオやナビゲーションの機能に加えて、インフォメーション(情報)、エンターテイメント(娯楽)などをドライバーや乗員に提供し、運転をサポートしたり、快適性を向上させたりするもの。

 

今回はメルセデス・ベンツの現行車両に搭載されている対話型インフォテイメントシステムMBUXにどのような機能があるのか。また、ユーザーにとってどう便利なのかをご紹介いたします。

▲2018年のAクラスからメルセデス・ベンツの対話型インフォテインメントシステム「MBUX」が搭載。現在では第3世代まで進化しています。

MBUXの数ある特徴の中でもっとも注目のポイントが、ユーザーごとに適応する個別対応能力を備えた人工知能(AI)による学習機能です。これはAIによってユーザーを認識し、それぞれの求めるニーズに応じてホスピタリティ(おもてなし)を提供するというもの。その結果クルマとドライバーそして乗員の間で心が通った結び付きが生まれる、としています。

 

使い方は簡単。MBUXは、ディスプレイのタッチスクリーン操作や自然対話式音声認識機能を備えたコントロールボイスで起動します。ボイスコントロールで起動する際には「ハイ メルセデス」という合い言葉がキーワードとなります。

▲インフォテイメント機能に加えて、ドライブモードの切り替えもディスプレイを見て操作する

従来のナビゲーションシステムの音声認識機能は命令語が決まっていて、操作する人がそのルールにのっとって発話しなければなりませんでした。しかしMBUXは自然言語認識機能の搭載により、ほとんどの命令を認識。インフォテイメントおよび車両操作関連の操作内容を認識、理解することができます。つまり人間がシステムに合わせるのではなく、システムが人間に合わせてくれるという画期的なシステムなのです。

 

例えば、エアコンの操作で気温を下げる場合「温度23度」という明確な命令でなくても「暑い」という遠回しな表現でも理解して空調を管理してくれます。

 

また、MBUXは学習機能を備えてるので新しい流行語を覚え、時代による言葉の用法の変化まで学習します。これにより従来の定型文ではなく、受け答えが多様化し幅広くなるというわけです。

 

くわえてMBUXのボイスコントロールは、車載コンピューターとクラウドサーバーの両方を使って可能な限り音声を正確に理解し、ユーザーの要求に応えるハイブリッドシステムとなっているのが特徴です。車載コンピューターとクラウドサーバーの両方でデータを評価し、それぞれ応答がシステムに送られ、どちらの応答がより確実かを判断して数秒以内に応答、反応します。MBUXがこのようなハイブリッド方式を採用したのは、他の多くの支援機能とは異なり、インターネットに接続しない状態でも応答できるようにするためとも。

▲MBUXを採用したことで、インストルメントパネルのデザインも変更され、ワイドスクリーンディスプレイを採用した

Aクラスに搭載された第1世代のMBUXに標準装備された自然対話式音声認識機能は、多くのインフォテインメント機能 (目的地入力、電話通話、音楽選択、メッセージ入力・読み上げ、気象情報)にくわえ、エアコンの温度調節、各種ヒーター、照明など多様な便利機能にも対応しています。

 

また、MBUXに備わる予測機能は人工知能を利用しており、ユーザーが次に何をしたいかを予測します。定期的に決まった電話番号へ電話をするユーザーに対しては、その時刻になるとディスプレイに相手の電話番号を「おすすめ」として表示。また、決まった時刻にラジオを放送局に切り替える方には、その操作も提案してくれるのです

▲Aクラスのインテリア。先進性とスポーティさを両立したデザインが特徴

ナビゲーションシステムにおいては、ユーザーがよく通行するルートを検知すると、そのルートを使った目的地への案内をすぐにバックグラウンドで開始。そしてナビゲーション画面に、例えばフィットネスクラブなどを「おすすめ目的地」として表示。ドライバーがそこへ行くことを指示すると、渋滞情報をはじめルートに関するあらゆる情報を提供。まさにユーザーにとっては、コンシェルジュのような役割を担ってくれるのです。

▲24時間緊急通報サービスなどのテレマティクスサービス「Mercedes me connect」を搭載(※ソフトバンク3Gサービスの終了にともない一部モデルでは現在利用不可のものもあります)

2018年に導入され約5年半が経過したMBUXですが、 2023年1月に日本市場に導入されたメルセデス・ベンツEクラスには学習能力をさらに高めた第3世代のMBUXが搭載されています。

 

第3世代へと進化したMBUXは、ルーティン機能の搭載やさらに使い勝手の良くなったメニューや音声認識など、大幅に進化したデジタル体験を提供します。そんな進化ポイントをご紹介しましょう。

▲販売開始したばかりのEクラスには最新世代のMBUXを搭載している

まず音声アシスタントの「ハイ メルセデス」は、Mercedes me車両アプリ内のオンラインサービスを起動することで優れた対話と学習能力を発揮。さらに新採用した Just Talk機能によって音声操作をキーワードである「ハイ メルセデス」を発話することなく行えるようになり利便性が向上しました(車内にドライバー以外の乗員がいない場合)。このJust Talk機能が起動するとディスプレイ上部に赤いマイクのマークが表示され、車両がボイスコマンド待ちの状態となります。

 

続いてはルーティン機能。日々行う車内での操作を簡略化できる機能です。日々の乗車中に行う流れを「ルーティン」として組み立て、一定の条件を満たした場合に各種機能を自動化することでドライバーの操作負担を軽減します。

 

例えば、車内の温度が15°C以下になったらシートヒーターをオンにして、一定の時刻になるとアンビエントライトを暖かなオレンジにするなどあらかじめいくつかのテンプレートが用意されています。もちろんユーザー自らルーティンを作成することも可能です。

▲Eクラスに搭載されている最新世代のMBUXは、様々な画面を重ねて表示できるゼロレイヤー機能を搭載

ゼロレイヤーは、ユーザー習慣や状況に応じて各種情報や機能を流動的かつ予測的に表示する先進的な機能です。トップ画面上に必要な情報や機能が必要なときに表示されるため、メニュー画面を呼び出して階層をたどったり、画面をスクロールして目的の機能を呼び出したりする必要がなくなります。

 

パーソナライゼーション機能は、ユーザー個々のプロファイルを作成し、運転席のシートメモリーやミラー位置の設定、アンビエントライトのカラー設定、そしてお気に入りのラジオ放送局、その他の機能を保存できます。このパーソナルプロファイルへのアクセスは、指紋や声による生体認証に対応していて、セキュリティも万全です。

 

最後にご紹介するMBUX ARナビゲーションは、フロントウインドウのカメラがとらえた周囲の映像にナビゲーション情報を重ねて表示する機能です。AR(拡張現実)を利用したナビゲーションシステムにより、メディアディスプレイ上にライブ映像を表示します。

▲Eクラスは、助手席一体型ディスプレイの「MBUXスーパースクリーン」をオプションで設定

右左折が必要なタイミングが近くなると、ライブ映像上に矢印などの補足情報が表示されるので、ドライバーは直感的にどちらに進めば良いのかを瞬時に判断することができます。

 

音声認識が注目されるMBUXですが、最新バージョンではこれまで以上にユーザーに寄り添いサポートするコンシェルジュ機能が向上しています。こういったホスピタリティの高さがメルセデス・ベンツの高いブランド力を支えるひとつの柱と言えるかもしれません。

 

みなさんも新車はもちろん、サーティファイドカーをご検討の際は、MBUXの世代や機能に注目してクルマ選びをすることをおすすめします。

 

(萩原文博)

萩原文博(はぎはら・ふみひろ)

 

AJAJ会員。大学在学中から中古車情報誌の編集部にアルバイトで参加。卒業後は編集者として企画立案し、ページ製作をおこなう。2006年からフリーランスエディター/ライターとして独立し、2015年より新車カタログ本制作を担当し年間200台以上の新車試乗・撮影を行っている。

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