2024年1月に日本デビューした新型Eクラス(W214型)。リリース後、約半年が経った現在でもメルセデス・ベンツ中野をはじめとした宮園輸入車販売に、多数お問い合わせが入っていますが、実際のスペックや乗り心地はいかがなものか?気になるところ。そこで今回は特別に自動車評論家の渡辺敏史氏よるレビュー記事で、新型Eクラスの魅力を余すことなくお伝えします。
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Sクラスをもっともシンプルな言葉で表すなら「自動車の頂点」となる。
これは僕の個人的な意見だけど、同意してくださる方も多いのではないかと思う。もちろん、ロールスロイスやらベントレーやらがあるだろうという意見もあるだろうが、それらはちょっと生産工程や使用環境や顧客ニーズや…というのが違う話になってくる。この辺りのカスタマーになると「日常」の尺度も過半とは異なる特別なものになる。従ってそこはマイバッハが担う領域だ。
Sクラスは乗っても乗せられても常に感じるのは日常の中の非日常だ。街の営みには馴染みながらも運転感覚の非凡さは世のあらゆるクルマとも一線を画し、乗せられる側にはフォーマルなもてなしの心をきちんと伝えてくる。当のメルセデスも、Sクラスの中身に関しては格別に入念な作り込みに及んでいることは、触るごとにはっきりと伝わってくる。
じゃあEクラスはどうなのかは。個人的には「自家用車の頂点」となる。
自家用車なんて括りは世の中的にはもはや形骸化しているが、意訳すればオーナードリブンカー、つまり所有者が運転席に座って動かすクルマの先端にいるということだ。実際、多くの自動車メーカーがセダンの開発の際にベンチマークとしてEクラスを購入し、徹底的に解析していることは、業界関係者の間ではよく知られた話だ。
その安心感もあってだろう、世界的にリピーターも多い銘柄ゆえ、なかなか大きく変わることが許されない。Eクラスは定番ならではのジレンマも常に抱えている。先代のW213型から新型のW214型へと、一見すると灯火類やグリルなどのグラフィック以外のところで、変化のほどをみてとるのは難しい。
が、当然ながら中身の進化は著しい。その主たるところは昨今の時流を鑑みての、大胆なデジタライゼーションにある。
乗り込んでみて、まず目を引く新しさはSクラスやCクラスと同様の横型大画面のタッチスクリーン式メディアディスプレイだろう。が、新しいEクラスは更にオプションでスーパースクリーンを選択することも可能だ。
これは中央部の14.4インチモニターと助手席部の12.3インチモニターを1枚のパネルで繋いだもので、助手席側のモニターでは車載のアプリケーションの操作のほか、走行中でも映像コンテンツをみることが可能だ。そのコンテンツ自体もNetflixのようなオンデマンドサービスや、TikTokのような動画配信サービスも含まれており、この辺りはさながらスマートフォン的な環境を実現している。一方で、走行中はドライバー側から映像をみえないようにマスキングするなど、安全への配慮も怠りなく施しているところがメルセデスらしい。
また、ダッシュボード中央部にはセルフィー&ビデオカメラを搭載しており、ラップトップを膝下で広げるなどすることなく、Zoomのようなオンラインのミーティングやカンファレンスに車中から参加することも可能だ。もちろんこちらも走行中には機能がロックする安全設計となっている。ちなみにスーパースクリーンやセルフィー&ビデオカメラは、デジタルインテリアパッケージというオプションに統合されており、そこまでの機能は必要ないというユーザーのニーズにも応えている。
新型Eクラスのパワートレインは4種類が用意される。ガソリンは2リットル4気筒ながらアウトプットがE200とE300の2グレード、ディーゼルが2リットル4気筒のE220d、そしてE200のエンジンを基に駆動用モーターを組み合わせたプラグインハイブリッドのE350eというのがその内訳だ。ちなみにE200、E300、E220dにも低速域などで駆動アシストを行う高出力スタータージェネレーター=ISGを搭載しており、言ってみれば全グレードで電動化を果たしているのがひとつの特徴といえるだろう。また、トリム的にはE300のみがエクスクルーシブ、他モデルはアバンギャルドとなるのも選択上のポイントとなる。スリーポインテッドスターのボンネットマスコットを備えたエクスクルーシブの佇まいは、昔からメルセデスに親しんできたオーナーにも好まれそうだ。
さりとて、動力性能的にはE200でも必要十分だ。低回転域からの力感は一層高まり、E220dとの差をしっかり詰めてきた。一方でE220dの側も静粛性を高めるなど、お互いの不得手なところをしっかり改善している。こうなると、乗り方次第では強烈な燃費が引き出せるE220dに対して、軽快感や高回転域の伸びやかさに勝るE200というところが選択の境目ということになるだろうか。
E350eはその数字が示す通り、エンジンとモーターの協調による強力な動力性能がひとつの特徴となる。一方で満充電からのEV走行レンジも最大112kmと長く、速度的には140km/hまでをカバー…と日本の環境ではパフォーマンス的にも充分だ。また、日本仕様はV2Hにも対応しており、住まいとの連携で小さなBEV並みに積まれたバッテリー容量をライフラインのバッファとしても使うことが出来る。自治体によってはE220dとの価格差を補助金で埋めてしまうような値付けは電動パワートレイン普及に対するメルセデスの意気込みが感じられる。
5mを切る全長、1.9mを切る全幅と、新しいEクラスは寸法的には常識的なところに収まっている。とはいえ、日本の環境においては小さいといえるクルマではない。車内にいて伝わる車格感も、大きすぎず、でも小さからずといったところだ。
が、それが走り始めるとピタリと肌に馴染む。まず考えられる理由は素直なデザインだ。程よく立てられたAピラーや下端がスパッと水平かつ直線的なサイドウインドウなど、保守的にみえるかもしれないディテールの端々が、車両感覚の掴みやすさに繋がっている。
加えて舵の効きという点も見逃せない要素だろう。Eクラスはメルセデスのプロダクトらしく、デフォルトでも最小回転半径は5.4mと、FFのコンパクトカークラスと変わらない。これがE300にオプションとなるリアアクスルステアが装着されると5mと、カローラもかくやの小回り性能を発揮する。
更に挙げられるのが走る曲がる停まるといった基本動作の質の高さだ。一時はアジリティ=敏捷などというテーマを掲げてスポーティさを盛んにアピールした時代もあったが、コーナリングにしてもブレーキングにしても応答性に刺々しさはない。先走るでも遅れるでもなく、人の感覚に折り重なるように反応するというのはメルセデスがクルマづくりにおいて大切にしてきた美点だが、この新型も然り、代々のEクラスにはそれが色濃く見て取れる。
運転者の感覚と実際の車格との間にブレがない、その安心感がクルマを小さく感じさせてくれるのだろう。そして、思い描いた通りに優しくクルマが動いてくれるという点は、ドライバーには包容力として感じられる。そういう意味では新型Eクラスは、見事にメルセデスが積み重ねてきた系譜の上にあるクルマだと思う。
(渡辺敏史)
渡辺敏史(わたなべ・としふみ)
自動車評論家。二輪・四輪の雑誌編集者を経てフリーランスの自動車ライターとして独立。以降『カーグラフィック』『NAVI』『モーターマガジン』等、名だたる自動車誌で活躍。ユーモアにあふれながらも簡潔な文章スタイルは、カーマニアのみならず一般的なドライバーからの支持を広く集めている。
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