クルマの購入前に実車を見に行くと、フロントウインドウ部に掲げられているのが「プライスボード」です。特に中古車の場合、価格以外にもクルマのプロフィールといえる情報がぎっしりと記載されています。実はそれがクルマの履歴書とでもいうべき存在。しっかりと読み取ることができれば、満足ゆくお買い物ができるはず。そんなプライスボードについて解説いたします。
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「プライス」と聞くと往年の名プロゴルファー、ニック・プライスを思い出すくらいにはゴルフ好きなライターの渡瀬です。
日本で販売されているクルマには新車と中古車があります。両者の違いは、公道を走行するための登録がされたことがあるか(ないか)。わかりやすくいえば、ナンバープレートがつけられたことがなければ新車、1度でもあれば基本的に中古車となります。
まれに「新古車」や「未使用車」「低走行車」という表現をされる車両が販売されていますが、これは使用(走行)されてはいないけれど、何らかの事情で登録はされた車両を指します。そのため「新古車」と名乗ってはいますが、中古車に分類されます。
宮園輸入車販売のショールームに行くと、新車・中古車ともクルマのフロントウインドウ部分にボードが掲げられているはずです。これはプライスボードといって、展示されている車両の価格や車名などの重要な情報が記載されています。ただ、新車と中古車とでは記載内容に大きな違いがあります。
というわけで、購入前に確認しておきたい主な項目について、メルセデス・ベンツ中野サーティファイドカーセンターの小柳裕司さんにお話をうかがいました。
新車のプライスボードは価格に関する情報が中心
小柳:新車のプライスボードには、基本的に車両の価格に関する情報が掲示されています。車両本体価格のほか、ローンを利用した場合の支払い条件、オプションを装着した場合の価格などが表示されています。
車両そのものに関する情報も記載されていますが、車両名やグレード名のほか、ボディサイズなどのカタログ数値が表示されている程度。新車は個々の車両によってコンディションが異なるということがありませんので、このような表示の仕方になっています。
中古車では個々の車両のコンディションを細かく記載
小柳:一方で、中古車のプライスボードには価格以外にもさまざまな情報が記載されています。表示する内容は、一般社団法人自動車公正取引協議会の規約で定められています。ひとつずつ項目をご説明しますね。
●車名
車両の車名やグレードが記載されています。
●支払総額
車両の購入に必要な費用の総額の目安です。後述する車両本体価格と諸費用を合計した価格となります。
●車両本体価格、諸費用
車両本体価格は車両本体(消費税込み)の価格です。諸費用は自動車税、自動車重量税(車検残のない車両のみ)、環境性能割といった購入に必要な税金と、登録に必要な代行手数料が含まれます。ただ、諸費用の金額は都道府県によって異なります。宮園輸入車販売の場合は東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県にお住まいの方の金額を記載しているとお考え下さい。
●初度登録(検査)年
クルマの登録申請が初めて行われた年月です。年次改良が行われた車種において、仕様や装備の有無を判断する基準となります。
●走行距離数
車のメーターに表示されている距離です。1000km未満の場合は実数値を、1000km以上の場合は1000km未満を四捨五入して表示されます。
●車検有効期限
車検残の有無と、残日数がある場合は有効期限が記載されています。車検が切れている場合は「車検整備付」と表示されます。
●主な使用区分、ボディカラー
ミッションや排気量、外板のボディカラーといったクルマの基本的な情報です。
●前使用者の整備点検記録簿、定期点検整備の内容
整備点検記録簿の有無と、その内容です。宮園輸入車販売では記録簿のない中古車は扱っていないため、全車が「有」と記載されています。
●保証
購入後にサポートが受けられる保証の有無について。メルセデス・ベンツ認定中古車では10年もしくは10万km以上経過した車両を除き、2年/走行距離無制限の保証を付帯しています。
●リサイクル料金
初度登録時に支払うリサイクル料金です。認定中古車はすべてが預託済みです。
●定期点検整備
納車前に行う定期点検整備についてはすべて納車前整備が実施されます。
●修復歴
車両の骨格部分である8つの部位に損傷があるもの、もしくは修復されたものを修復歴車と呼びます。宮園輸入車販売では修復歴のある車両は扱っていません。
●使用区分
これまでどういう用途で使われてきたかを示します。基本的に「自家用」ですが、ごくまれに「レンタカー」として使用されていた車両も存在します。
チェックしておきたい「車検有効期間」と「保証」
小柳:中古車の購入をご検討の方は、車両本体価格や初度登録年、走行距離については既にお調べになってからお越しになる方がほとんどでしょう。そこで、プライスボードでは「車検有効期間」と「保証」について、特に注目していただきたいと思います。
宮園輸入車販売では車検残がない車両であっても、車検や整備に関係する費用は支払総額に含まれています。一方で、車検が残っているけれども有効期限の短い車両は、近日中に追加の費用が必要となりますので、ご注意いただければと思います。
保証については前述したとおり、10年または10万kmを経過した車両については付帯しない場合がありますので、ご注意下さい。
ボディカラーの正式名称を知っておく数少ないチャンス
小柳:もうひとつ、確認していただきたいのが「ボディカラー」です。中古車において、外装色の正式な名称を知る機会は、意外に少ないのです。車検証には色の記載はありませんし、中古車の場合は当時のカタログを見つけるのも難しいものです。
万が一、外装を傷つけてしまった場合、ボディーカラーの名前を覚えておくと便利なことが多いもの。ご購入いただく前に、ぜひメモに控えていただくことをおすすめします。
(渡瀬基樹)
渡瀬基樹(わたせ・もとき)
ゴルフ雑誌、自動車雑誌などを経て、現在はフリーの編集者・ライター。『Octane日本版』など自動車関係の編集のほか、鉄道・ライフスタイル系の記事制作・編集に携わるほか、クラシックカーやスーパーカーのツーリング・ツアーイベントのルート設計やツアーディレクターも務める。著作に『迷宮駅を探索する』(星海社新書)。
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