「リレーアタック」など、新しい技術や装置を使った車両盗難が増えています。しかし、メルセデス・ベンツが車両盗難数の上位に挙がることはほとんどありません。なぜメルセデス・ベンツは「安全」なのか、メルセデス・ベンツ西新宿のセールススタッフにうかがいました。
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自宅のカギをこれまでに3度なくしたことがある、ライターの渡瀬です。
そのうち2本は、おそらく仕事で出かけた京都と大阪のどこかにある(あった)はずです。関西は鬼門なのかもしれません。いや、やはり自分が単に粗忽者なだけですね。関西のみなさん、ごめんなさい。
実は国内の「落とし物」の数は、年々増えているようです。2023年に全国の警察に届けられた落とし物の数は約2979万点で過去最多を記録しました。スマートフォンやICカード、ワイヤレスイヤホンなど、小型で機能性が高く、かつ高額なアイテムが増えたことが影響しているようです。もちろん落とし物をきちんと警察に届ける正直な国民性も関係しているはず。
そんな安全な国・日本では、クルマの盗難件数も少なくなっているようです。2023年の自動車盗難認知件数は5,762件と、ピークだった2003年の6万4,223件の10分の1以下。ここ3年ほどはほぼ横ばいで推移しています。よくニュースになる自動車盗難ですが、それほど数は多くないことがわかります。
しかも盗難車の上位を占めるのは国産車が多く、メルセデス・ベンツが話題になることが少ないのはなぜでしょうか。メルセデス・ベンツのセキュリティシステムはどのようなしくみになっているのか、メルセデス・ベンツ西新宿のセールススタッフ本間宏康さんにお話をうかがいました。
──最近の車両盗難の手口として増えているのが「リレーアタック」です。スマートキーが発する微弱な電波をキャッチして車のロックを解除する仕組みですが、メルセデス・ベンツはどのような対策を取っているのですか?
本間:メルセデス・ベンツのスマートキーは使用後数分経過すると電波を発しなくなるようになっています。他ブランドのスマートキーでは金属製の缶やアルミホイルに入れて遮断するなどの対策をされている方がいらっしゃいますが、メルセデス・ベンツでは電波の発信を止めるという、他ブランドとは違った方法で安全を確保しています。
──キーが、まさしく盗難対策の「カギ」となっているんですね。
本間:ドアのロックやアンロックを行うキーレスゴーエントリーシステムでは、暗号化された信号を発信して不正コピーを防止しています。またエンジンイモビライザーによって、キー以外のものでエンジンをかけようとすると始動しない仕組みになっています。
──それでも、クルマごと吊り上げられるような大胆な盗み方をされた場合はどうでしょうか?
本間:Mercedes meとお使いのスマートフォンを接続することで、クルマの位置を把握することができます。GPSで位置情報を把握できますので、盗難時にも有効です。現行モデルではおおむねすべての車種で対応しています。
──原始的な方法ですが、カー用品店などで販売されているハンドルロックなどは有効ですか?
本間:最新のモデルはステアリングにセンサーなどが備わっていて、運転支援を行うためのさまざまな情報を収集しています。そのため、ステアリングを圧迫するロックツールなどの使用はおすすめできません。
物理的な方法でしたら、盗難の作業をさせるスペースを作らないことはとても有効な方法です。ガレージ付きの車庫や地下の駐車場は侵入防止になりますし、パレット式の機械式駐車場はパレットを動かすキーが必要ですので二重のセキュリティになります。
一方で最近増えているのが、パーツだけを盗んでいくもの。特に売買がしやすく、比較的脱着しやすいタイヤホイールは盗難の対象になりやすいです。これも、作業スペースを作らないように壁ギリギリに駐車したり、ロックナットを装着するなどの物理的な対策が有効です。
──なるほど。これは駐車テクニックを磨かないと。
本間:当社ではここ20年ほどでお客様の車両の盗難は1件しか報告されておりませんし、それも後日無事に発見されました。盗まれないような対策だけでなく、もし盗まれても補償が受けられるように、盗難保険に加入しておくこともおすすめしたいです。
──さまざまなセキュリティ対策が行われているメルセデス・ベンツですが、盗難方法も高度化している時代。最新技術と物理的な方法を組み合わせて、愛車を守っていきたいですね! 本日はありがとうございました。
(渡瀬基樹)
渡瀬基樹(わたせ・もとき)
ゴルフ雑誌、自動車雑誌などを経て、現在はフリーの編集者・ライター。『Octane日本版』など自動車関係の編集のほか、鉄道・ライフスタイル系の記事制作・編集に携わるほか、クラシックカーやスーパーカーのツーリング・ツアーイベントのルート設計やツアーディレクターも務める。著作に『迷宮駅を探索する』(星海社新書)。
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