2024.06.20

今後値上がり予想あり!いま乗るべきV8エンジンのメルセデス

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新車は高出力のエンジンを搭載し快適装備が充実した上級グレードほど車両本体価格が高くなりますが、中古車の場合はそうとは限りません。それは、中古車は人気(需要)という要素が価格に大きく影響するから。一般的に中古車は税金や燃料代のかかる大排気量エンジン搭載車ほど敬遠され、相場が安くなる傾向があります。逆に言えば、いずれ電動化が進みいつかは絶滅してしまうかもしれない大排気量エンジン車を安く手に入れる最後のチャンスでもあります。というわけで、メルセデス・ベンツの中でも名機といわれるV8エンジンを搭載したモデルをご紹介します。

 

 

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以前、中古車メディアで編集者をしていたライターの萩原です。

 

メルセデス・ベンツに限らず、新車は高出力のエンジンを搭載し快適装備が充実した上級グレードほど車両本体価格は高くなるのが一般的です。しかし中古車はその限りではありません。

 

例えば、高級時計のロレックスの中でも人気が高いのがクロノグラフの「デイトナ」です。デイトナの場合、もっとも定価が安いステンレスの人気が高く、中古販売店での販売価格はもともと新品時では高額な「コンビ」よりも高くなる傾向があります。

 

なぜこのような逆転現象が起きるのかというと、中古品は需要と供給のバランスによって価格(相場)が決まるからです。新車や新品では関係のなかった「人気」という要素が、中古品では価格に影響をおよぼします。実際にクルマでも税金や燃料代といったランニングコストがかかる大排気量エンジン搭載車ほど中古車では敬遠されるため、小排気量エンジン車と販売価格が逆転するという現象も起きることがあります。

 

くわえて昨今の環境への配慮から大排気量エンジンを搭載した新車は、メルセデス・ベンツにおいても減少しています。いずれ大排気量エンジン車は絶滅してしまうかもしれません。

 

だからこそ、価格が落ち着いている今が手に入れる最後のチャンスと言えるでしょう。

 

というわけで、今回は電動化の前に乗っておきたい「名機」と呼ばれるメルセデス・ベンツのV型8気筒エンジンを解説し、搭載しているモデルをご紹介いたします。圧倒的なパワーによる走りとラグジュアリーな装備が充実したモデルは一度体験したら、きっと虜になってしまうことでしょう。

●M178型 4L V型8気筒ツインターボエンジン

▲AMG GT専用に開発されたM178型エンジン。軽量コンパクトなのが特徴

2015年に登場したスーパースポーツカーのメルセデスAMG GT。このメルセデスAMG GTシリーズのために新開発されたのが、M178型 4L V型8気筒ツインターボエンジンです。

 

“One man – one engine”これは、厳格な品質基準に従って、ひとりのマイスターが一基のエンジンを最初から最後まで責任を持って手作業で組み上げるというメルセデスAMGの哲学です。

 

こうした思想から誕生し、メルセデスAMG GTに搭載されているのが、M178型 4L V型8気筒ツインターボエンジン。砂型鋳造されたクローズドデッキのアルミニウムクランクケースに鍛造アルミニウム製ピストンを組み合わせることで、乾燥重量209kgと軽量化しながら高い強度を両立しています。

▲M178型エンジンを搭載したAMG GTロードスター

またシリンダーウォールにスチールカーボン材を溶射コーティングするNANOSLIDE摩擦低減加工を施すことで、フリクションロスを低減するとともにエンジンの軽量化にも貢献しています。

 

オイル供給方式はレーシングカーにも採用されているドライサンプ潤滑システムを採用。オイルパンをエンジン底部から排除することでウェットサンプ潤滑方式採用時よりエンジン搭載位置を55mm低くすることが可能となり、車両の低重心化が可能。また高い横加速度(横G)が発生する高速コーナリング時での安定したオイル供給を可能としています。

 

2基のターボチャージャーはV型シリンダーバンクの外側ではなく内側に配置する「ホットインサイドV」レイアウトを採用。エンジンを可能な限りコンパクトにするとともに、ターボチャージャーへの吸気経路を最適化することで、優れたレスポンスを実現しています。

 

エンジン出力は搭載モデルごとに異なりますが、最高出力は340kW(462ps)~430kW(585ps)、最大トルクは600~700Nm。この高出力なエンジンを軽量の2シーターボディに載せていますので、そのパワフルさは推して知るべしです。

●M177型 4L V型8気筒ツインターボエンジン

▲最高出力680psという高出力を発生するM177型 4L V型8気筒ツインターボエンジン

モータースポーツの最高峰といえばF1です。その2015シーズンのオフィシャルメディカルカーとして活躍していたのが、メルセデスAMG C 63。このモデルに搭載されていたエンジンが、M177型 4L V型8気筒ツインターボエンジンです。

 

M177型エンジンは、メルセデスAMG社が自社開発したスーパースポーツカー、メルセデスAMG GTと基本性能が共通となっています。M178型エンジンと同様に厳格な品質基準にしたがって、ひとりのマイスターが一基のエンジンを最初から最後まで責任を持って手作業で組み上げています。

▲M177型エンジンを搭載したAMG GT4ドアクーペ

アルミニウムクランクケースに鍛造アルミニウム製ピストンを組み合わせることをはじめ、シリンダーウォールにスチールカーボン材を溶射コーティングするNANOSLIDE摩擦低減加工を実施。そして2基のターボチャージャーはV型シリンダーバンクの外側ではなく内側に配置する「ホットインサイドV」レイアウトの採用は共通で、M178型エンジンとの違いはオイル供給方式ぐらいです。

 

エンジンを可能な限りコンパクトにするとともに、ターボチャージャーへの吸排気経路を最適化することで、優れたレスポンスを実現しています。最高出力は350kW(476ps)~500kW(680ps)、最大トルクは650~900Nmとモデルごとに異なっています。

 

M177型 4L V型8気筒ツインターボエンジンは、2015年に登場したAMG C63を皮切りに、各63モデルに加えて、アストンマーティンにも搭載されているエンジンで、現在でもV8エンジンの主力となっています。

●M176型 4L V型8気筒ツインターボエンジン

▲AMGが開発したエンジンをベースとしたM176型4LV8エンジン

2015年12月に行ったGクラスの一部改良での際に、G550に新採用されたのがM176型 4L V型8気筒ツインターボエンジンです。

 

Gクラスの中核モデルにあたるG 550には、メルセデスAMG GTなどに搭載されているAMG 4L V8直噴ツインターボエンジンをベースに、新開発されたM176型エンジンが搭載されました。

 

このG550を皮切りにS560やマイバッハS560などに搭載され、現在でも多くのモデルに搭載されている主力エンジンの一つです。

▲M176型エンジンは2015年に一部改良を行ったGクラスから搭載された

M176型 4L V型8気筒ツインターボエンジンは、2基のターボチャージャーをV型シリンダーバンクの外側ではなく内側に配置する「ホットインサイドV」レイアウトを採用し、エンジンを可能な限りコンパクトにするとともに、ターボチャージャーへの吸気経路を最適化することで、優れたレスポンスを実現しているのが特徴です。

 

また、シリンダーウォールにスチールカーボン材を溶射コーティングするNANOSLIDE摩擦低減加工を施すことで、フリクションロスを低減するとともにエンジンの軽量化にも貢献しています。

 

エンジン出力はG550が最高出力310kW(421ps)、最大トルク610Nm。そのほかのモデルは346kW(469ps)、最大トルク700Nmとなっています。

●M157型5.5L V型8気筒ツインターボエンジン

▲63系モデルに広く搭載されているM157型エンジン

このM157型は、M156型6.3L V型8気筒エンジンの後継として、2011年に登場したE63 AMGを皮切りに、CLSやSクラス、GクラスなどのAMGモデルに2018年頃まで搭載されていた5.5L V型8気筒ツインターボエンジンです。

 

63系に搭載されたM157型5.5L V型8気筒ツインターボエンジンは、エンジン本体のアルミ合金製ブロックに、Silitecと呼ばれるアルミ・シリコン合金製ライナーを鋳込む構造を採用。ピエゾインジェクターを用いたスプレーガイデッド・ガソリン直噴式燃料噴射システムやツインターボチャージャー、アイドリングストップ機構などを採用することで、高出力&低燃費を両立しています。

▲CLSをはじめ搭載しているモデルが豊富で中古車も見つけやすく、コストパフォーマンスも高い

エンジン出力はモデルによって異なり、最高出力386kW(525ps)~430kW(585ps)、最大トルク700~900Nmを発生。大排気量エンジンの醍醐味を味わえるコストパフォーマンスの高いモデルが多く存在しています。

●M156型 6.3L V型8気筒自然吸気エンジン

▲どこまでも加速していく感覚が味わえるM156型エンジン(写真の仕様・装備は日本仕様と異なる場合があります)

今回紹介する5つのエンジンの中で、唯一の自然吸気エンジンとなるのがM156型 6.3LV型8気筒エンジンです。このM156型 V8エンジンは、メルセデス・ベンツのV8エンジンの中でも名機中の名機で、現在でも多くの人を魅了しています。

▲M156型エンジンを搭載したC63クーペは人気が高い(写真の仕様・装備は日本仕様と異なる場合があります)

エンジンの出力は車種ごとに異なり、最高出力は336kW(457ps)~386kW(525ps)。最大トルクは600~630Nmを発生します。総排気量6208ccの6.3L V型8気筒自然吸気エンジンは、スーパースポーツカーSLS AMG用の鍛造ピストン、コンロッド、軽量設計クランクシャフトを採用。

 

さらに専用開発のエンジンコントロールユニットを使用するなど、専用チューニングを施し強大なトルクを発生する自然吸気エンジンです。サーキット走行等の過酷な条件下においても、最大のパフォーマンスを発揮できるように、エンジンオイルの冷却システムは SLS AMG のコンポーネントを採用することで、冷却面積を 50 % 拡大しています。

 

高回転型AMG V8自然吸気エンジンとAMGスポーツエグゾーストシステムが、 AMGならではのエモーショナルなサウンドを奏でて、ドライバーの情熱をいやがうえにも掻き立てます。

 

このM156型エンジンは、2006年に登場したE63AMGを皮切りに、2011年に登場し、当時史上最強のCクラスと謳われたC63AMGクーペブラックシリーズなど幅広い車種に搭載されました。

 

●最後に

 

今回、ご紹介した5種類のV8エンジンはメルセデス・ベンツ、そしてAMGが手がけたいずれも「名機」と呼ばれるエンジンばかりです。とりわけ個人的にこの中で今乗りたいエンジンを選ぶとすれば、M156型エンジンです。

 

その理由は、唯一の自然吸気エンジンであること。自動車税は年間10万円を超えてしまいますが、その重い税負担が吹き飛ぶほどの官能的な速さとサウンドが魅力です。なかでもこの高出力エンジンをコンパクトなボディに搭載したC63クーペがオススメです。

 

(萩原文博)

萩原文博(はぎはら・ふみひろ)

 

AJAJ会員。大学在学中から中古車情報誌の編集部にアルバイトで参加。卒業後は編集者として企画立案し、ページ製作をおこなう。2006年からフリーランスエディター/ライターとして独立2015年より、新車カタログ本制作を担当し年間200台以上の新車試乗・撮影を行っている。

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